AI手帖

ARTEX・Cairn・Strixとは? 図でわかるAIの調査と検証

AIが「調べる→試す→結果から次を決める」を繰り返す。ARTEX・Cairn・Strixは、この流れを複数のエージェントで進める仕組みです。

違いは、仕事の分け方と結果の残し方。図で見ていきます。

この記事の流れ

1. AIが、次の調査も決める

チャットAIでは、人が答えを読んで次の指示を出します。これらのエージェントは、調査結果を受け取り、次に何を確かめるかも判断します。

結果を、次の調査へ返す
調べる情報を集める
試す仮説を確かめる
見直す結果から次を選ぶ
↶ 分からなければ、別の調査へ
3つの実装に共通する流れを、本記事が簡略化した図。

1回の回答で終わらず、記録を読み返して調査を続ける点が特徴です。

2. 3つの違いを、先に見る

ARTEX

計画役が仕事を配る

対象と調査の履歴を結び付ける。

Cairn

共有メモから枝分かれ

別々の調査結果を、次の手がかりにする。

Strix

見つけた弱点を確かめる

証拠を確認して、報告にまとめる。

ARTEXとStrixはセキュリティ検証向け。Cairnは、数学などにも使う汎用的な探索の仕組みです。

3. ARTEX:計画役と実行役に分ける

plannerが調査方針を決め、workerが実行します。次の方針を作るのはplannerです。

計画 → 分担 → 結果 → 次の計画
planner|計画役何を調べるか決める
worker A割り当てた調査
worker B別の独立した調査
資産の記録どのホスト・APIか
探索の記録何を試し、何が分かったか
↶ 記録を読んで、plannerが次を決める
依存関係のある調査は前の結果を待つ。独立した調査は並行して進める。

「どの対象に、何を試したか」をたどれる設計です。計画役の確認版 ↗ · 実行役の確認版 ↗

4. Cairn:結果を共有して、探索を広げる

各エージェントは、同じ共有ボードを読み書きします。別の調査で得た情報も、次の判断に使えます。

一つの結果から分岐し、別々の結果を合流させる
共有ボードFact=得た情報 / Intent=次に調べること
調査 A手がかりを確かめる
調査 B別の可能性を調べる
次の調査AとBの結果を組み合わせる
↶ 新しい結果を、共有ボードへ
Factはエージェントが記録した情報。名前だけで正しさが保証されるわけではない。

たとえば、調査Aで分かった条件を調査Bでも使う。一度得た情報を、別の調査でも再利用できます。共有ボードの説明 ↗ · 次の判断をするコード ↗

5. Strix:疑わしい挙動を、証拠付きの報告へ

Web・API・コードが対象です。親エージェントが仕事を分け、必要に応じて子エージェントを作ります。

発見しただけで、報告を確定しない
調べるWeb・API・コード
検証する再現・反証を確認
報告する証拠・影響を記録
↶ 再現できなければ、仮説を見直す
固定した3人のエージェントではなく、検証の流れを簡略化した図。

「怪しい」を「確認できた」へ進める設計です。ただし、報告内容が常に正しいという意味ではありません。役割の設計 ↗ · 報告のコード ↗

6. エージェントを増やせば、速くなる?

Cairnの論文では、同じGLM-5.1を使う比較方式「Direct」と比べています。Cybenchの40課題中、30課題ではDirectの方が速い結果でした。

Cybench全40課題の平均

時間|短い方が速い

Direct
7.31分
Cairn
8.49分

トークン量|処理した入出力の量

Direct
0.83M
Cairn
3.22M
論文の数値を図にしたもの。Mは100万トークン。本サイトの実測ではない。

一方、Directが100万トークン以上を使った高負荷群17課題では、Cairnが13課題(76.5%)で速く、最大3.08倍でした。

高負荷群17課題=FrontierMath 6問+Cybench 11課題。Cybench単独では7/11課題(63.6%)。実際の企業への侵入成功率ではありません。

長い探索では分担が効くことがある。ただし、調整のためにトークンも増えます。評価条件と結果 ↗

7. ARTEXの攻撃利用も報告されている

2026年10月7日、CrowdStrikeは韓国の金融機関を狙った活動で、ARTEXとLLMの利用を報告しました。

報告の根拠と、まだ分からないこと
分析の根拠
  • 攻撃者側の設定ファイル
  • Claude Codeのセッション記録
この資料だけでは確定できない
  • 攻撃者の組織への帰属
  • 被害組織数や被害の全体像
CrowdStrikeの公開分析を整理。攻撃の手順や実行例を示した図ではない。

検証に使う仕組みが、攻撃にも使われる。ツールの設計と、実際に観測された活動は分けて読みましょう。CrowdStrikeの分析 ↗

8. 最後に、見るべき3点

01誰が次を決めるか

計画と実行の分担。

02何を残すか

試したこと、結果、未確認。

03何を根拠に報告するか

再現した結果と証拠。

エージェントの数より、結果が次の判断と報告へどうつながるかを見ると、3つの違いが分かります。

従来のツールとの違い

Nucleiはテンプレートに沿った検査、Semgrepはコードの静的解析が中心です。エージェントは、その前後の調査方針や結果の読み取りも担います。既存の検査ツールを置き換えるとは限りません。

関連:国内外のサイバー攻撃 · AIに本番権限を渡す前に

更新履歴

2026年10月11日:CrowdStrikeの分析とCairnの集計対象を追記。同日、説明を短くし、6つの図へ組み直しました。

参照した公式資料・公開実装

出典を開く(24件)

確認日:2026年10月7日。公開資料と、2026年10月7日に確認したコードの比較です。ツールの実行や性能の再現は行っていません。ARTEXのコードリンクは現在参照できません。続報は10月11日に確認しました。